ューチュー啼きながら飛び回りました。鳥さしは、止まったと思って近付くと、パッと逃げます。又近付くとパッと逃げる。こうして深いドブの処まで誘って来ますと、案の定鳥さしは夢中になってドブの中に落ちました。その時に取り落したモチ棹を雀どもは寄ってたかって引っ啣えて山の方へ飛んで来て、いつも鵙が来る木のてっぺんに立てかけて置きました。
 何にも知らぬ鵙はいつもの通り遠方からキイキイ啼きながら飛んで来ていつも止まる木の一番高い処に止まりますと、コハ如何に、足がピタリと吸い付きました。大変だと思って飛び立つと、今度は羽根がモチにからまってしまいました。
「キイキイキイキイ助けてくれ」
 と一所懸命もがいておる処へ、最前ドブに落ちた鳥さしがモチ棹を追っかけて来てこの様子を見ると、
「雀が鵙を取ってくれた」
 と喜んで鵙の首をキュットひねって袋に入れてモチ棹を担いで帰って行きました。



底本:「夢野久作全集7」三一書房
   1970(昭和45)年1月31日第1版第1刷発行
   1992(平成4)年2月29日第1版第12刷発行
初出:「九州日報」
   1925(大正14)年10月7日
入力:川
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