たノートの切端《きれはし》を、瘠せ細ったレミヤ[#「レミヤ」は太字]の両手に渡しますと、レミヤ[#「レミヤ」は太字]は未だスッカリ読んでしまわぬうちに涙を一パイに湛えました。そうして二枚の紙片を大切そうに重ねて枕の下に入れますと私達の手を執《と》って、自分の胸の上でシッカリと握手をさせました。
「お二人とも死なないで頂戴。……仲よくしてちょうだい……」
と云ううちに窶《やつ》れた頬を真赤に染めて、白い布団に潜ってしまいました。
レミヤ[#「レミヤ」は太字]はその翌る日から、お医者様がビックリされるほど元気を回復し初めました。そうしてそれから一週間目には以前とは見違えるほど晴れやかな顔に、美しくお化粧をして、私たちと一所《いっしょ》の食卓に着いてくれましたが、その時の食事の愉快でお美味《いし》かった事ばかりは永久に説明の言葉を発見し得ないであろうと思われる位で御座いました。
私達二人はその席上でレミヤ[#「レミヤ」は太字]の手から籤を引いてドチラが先に帽子と外套を取るかを決めましたが、その結果はこのお話の筋に必要がありませんから略さして頂きます。
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