た男というのですから到底当世の世の中に見つかるものでは御座いますまい。第一、ハルスカイン[#「ハルスカイン」は太字]老夫婦が知っている限りの若い男で、レミヤ[#「レミヤ」は太字]嬢に恋文を贈らない者は一人も居ないというのですからやり切れませぬ。中には図々しくも直接行動に出て、花束を片手にハルスカイン[#「ハルスカイン」は太字]山荘の玄関に立ったために、ハルスカイン[#「ハルスカイン」は太字]老人からステッキ[#「ステッキ」は太字]を振り廻わされて、這々《ほうほう》の体で逃げ帰った者も尠《すくな》くないという有様で御座いました。
ところがここに唯一人……否……タッタ二人だけ、レミヤ[#「レミヤ」は太字]嬢に花束も恋文も送らない青年がありました。それは老ハルスカイン[#「ハルスカイン」は太字]氏の死んだ兄の息子たちで、レミヤ[#「レミヤ」は太字]の従兄《いとこ》に当るイグノラン[#「イグノラン」は太字]兄弟……すなわち私たち二人で御座いました。
(2)[#「(2)」は縦中横]
私たち兄弟は元来、従妹《いとこ》のレミヤ[#「レミヤ」は太字]と幼友達になっていた者でしたが
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