涙香・ポー・それから
夢野久作

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)烏滸《おこ》がましい

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)押川|春浪《しゅんろう》の
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 探偵小説作家なぞと呼ばれて返事を差出すのは、如何にも烏滸《おこ》がましい気がして赤面します。けれども元来が探偵小説好きなのですから、ソウ呼ばれますと何がなしに嬉しいことも事実です。
 ところで私は今でも探偵小説の定義がわからずに困っているのです。阿呆らしい話ですが、自分の書いているものはドンナ種類に属する小説だろうかと時々疑ってみる事さえあります。そうして漠然ながら、これでも探偵小説に入れられぬ事はあるまい……といったようなアイマイな、コジツケ半分の気持ちで満足して、自分勝手な興味を中心に書いている状態です。
 私が一番最初に読んだ探偵小説は、涙香《るいこう》の「活地獄《いきじごく》」だったと思います。モット古い記憶にさかのぼりますと私は十歳前後から、読んではいけないと叱られ叱られ新聞を読んでおりましたが、そのたんびに、新聞記者というものは、どうしてコンナに色んな事を探り出すのか知
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