…懐中電燈を照し、そこいらを調べまわる。………紙屑籠………唾壺《つばつぼ》………小型の瓦斯《ガス》ストーブなぞ……。
……………………大きなインキ瓶の口が濡れているのに気付き、取り上げて二三回振ってみてから又下に置く。
……………………机のまわりを押しこころみて、秘密の落し戸の有無をたしかめる。
……………………次に、机の抽出しを下から上へ順々に検査して、机の表面まで懐中電燈を持って来る。
……………………まず、案内状の回答用葉書に新しく「同 シズ子」と書いたのを照し「欠席」の文字の上のカスレタペンの痕《あと》を検《あらた》め、次いでインキに濡れたピンセットを照し出す。
……………………すぐにインキが半分以上減っている壺に電燈をさしつける。
……………………右手を握りしめて「占《し》めた」というこなし……。
……………………懐中電燈を消して退場……。
[#ここで字下げ終わり]

     第二の場面[#「第二の場面」は太字]

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…………暗い部屋に置いたピアノのキーのところ、三尺四尺ばかり……。
…………楽譜は置いてない……。
…………一方の窓
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