リとした、上品な中年増《ちゅうどしま》……。
[#ここから2字下げ、折り返して3字下げ]
……左の薬指に華奢《きゃしゃ》なダイヤ入りと、エンゲージリングを一ツずつ……。
……優しい心のふるえを時々あらわす……。
[#ここから改行天付き、折り返して3字下げ]
●女中の手……真黒く、丸々と脂切《あぶらぎ》った……。
[#ここから2字下げ、折り返して3字下げ]
……ダラリとした無神経……。
[#ここから改行天付き、折り返して3字下げ]
●探偵の手……三十前後の、黒くて、強そうな……。
[#ここから2字下げ、折り返して3字下げ]
……頭のよさをあらわすテキパキとした動き……。
[#ここで字下げ終わり]

     第一の場面[#「第一の場面」は太字]

[#ここから2字下げ、折り返して3字下げ]
……贅沢な事務用机の中央の、椅子に接した三尺四方ばかり……。
……凝《こ》った文具いろいろ……。
……高雅な卓上電燈、写真立て、豆人形、一輪挿し、灰落しなぞをキチンと並べてある……。
……一隅の置時計は九時十五分を示している……。
……薄暗い窓あかりがさしている……。
……時々自動車のヘッドライトが窓
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