えて
這ひまはる硝子《ガラス》の瓶の
夏の夕ぐれ
* * *
何者か殺し度い気持ち
たゞひとり
アハ/\/\と高笑ひする
屠殺所に
暗く音なく血が垂れる
真昼のやうな満月の下
風の音が高まれば
又思ひ出す
溝に棄てゝ来た短刀と髪毛
殺しても/\まだ飽き足らぬ
憎い彼女の
横頬のほくろ
日が照れば
子供等は歌を唄ひ出す
俺は腕を組んで
反逆を思ふ
わるいもの見たと思うて
立ち帰る 彼女の室の
※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]《むし》られた蝶
わが心狂ひ得ぬこそ悲しけれ
狂へと責むる
鞭をながめて
* * *
うつゝなく人を仏になし給へ
み佩刀《はかせ》近く
呑《のみ》まゐらする
君の眼はあまりに可愛ゆし
そんな眼の小鳥を
思はず締めしことあり
彼女を先づ心で殺してくれようと
見つめておいて
ソツト眼を閉ぢる
蛇の群れを生ませたならば
………なぞ思ふ
取りすましてゐる少女を見つゝ
頭の無い猿の形の良心が
女と俺の間に
寝てゐる
フト立ち止まる
人を殺すにふさはしい
煉瓦の塀の横のまひる日
欲しくもない
ト
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