ゆきます」
四
芳夫は思案に余ったあげく、高山という名探偵を訪問して一切の経過を打明けて頼んだ。
「僕の百万円を奪った奴を見付け出して下さい。百万円を取り返して下さい。成功すれば謝礼としてその半額を呈上します」
名探偵は快よくうなずいた。
「どうか葉巻を一本吸う間待って下さい。考えますから」
五
葉巻が短かくなると、高山名探偵は窓の外へ投げ棄てた。組んでいた腕を解いて、事もなげに微笑した。
「百万円を奪った犯人は、あなたの心のほかに居ります」
芳夫は愕然とした。無言のまま眼を輝やかして一膝進めたが、名探偵は依然として微笑を続けた。
「それは一人の若い女性です。しかも非常な美人で、学識といい、心操《しんそう》といい、実に申分のない処女です」
芳夫は思わず叫んだ。
「それはどこに居りますか」
「それを探し出し得る人は世界中にあなた一人です」
芳夫は面喰った。独言《ひとりごと》のように云った。
「いったい……それは……どういうわけで……」
名探偵は厳粛な口調で説明した。
「あなたは百万円を得られる前に、いろんな計劃を立てられたでしょう。それは
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