ざない》に負けるような事がありませぬうちに…………。
せめて二人の肉体《からだ》だけでも清浄《きよらか》でおりますうちに……。
*
ああ神様…………私たち二人は、こんな苛責《くるしみ》に会いながら、病気一つせずに、日に増《ま》し丸々と肥って、康強《すこやか》に、美しく長《そだ》って行くのです、この島の清らかな風と、水と、豊穣《ゆたか》な食物《かて》と、美しい、楽しい、花と鳥とに護られて…………。
ああ。何という恐ろしい責め苦でしょう。この美しい、楽しい島はもうスッカリ地獄です。
神様、神様。あなたはなぜ私たち二人を、一思いに屠殺《ころ》して下さらないのですか…………。
[#地から2字上げ]――太郎記す………
◇第三の瓶の内容
オ父サマ。オ母サマ。ボクタチ兄ダイハ、ナカヨク、タッシャニ、コノシマニ、クラシテイマス。ハヤク、タスケニ、キテクダサイ。
[#地付き]市川 太郎
[#地付き]イチカワ アヤコ
底本:「夢野久作怪奇幻想傑作選 あやかしの鼓」角川ホラー文庫、角川書店
1998(平成10)年4月10日初版発行
初出:「猟奇」
1928(昭和3)年10月
入力:林裕司
校正:浜野 智
1998年11月10日公開
2003年10月15日修正
青空文庫作成ファイル:
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