間人間を馬鹿にし切っている気持ちがありありと見抜かれるのであります。況んや万に一つにも鼻の表現法の真髄に体達した人にこれ等の悪魔式鼻の表現が出会ったならば、すぐに根こそげ本性を見破られるでありましょう

     何となき疑い
       ――悪魔式鼻の表現(七)

 悪魔はあらゆる霊智の存在を無視し、世間人間を馬鹿にしております。その無視しているところにその本性を看破される原因が存在し、その馬鹿にしているところに馬鹿にされる原因が潜《ひそ》んでいるのであります。
 更にこれを名優の鼻の表現と比較すれば一目瞭然であります。名優の鼻の表現の根本基調を作《な》しているものはその芸術に対する熱誠只一つでありますが、悪魔の鼻の表現の基調をなしているものは、大胆さ、図々しさ、冷淡さ、狡猾さなぞで、決して澄み切った明るい表現とは見えないのであります。況《ま》してやその表現の根底が仮りの本心、仮りの性格であるに於てをやであります。
 鼻の表現はこれ等を飽く迄も如実に写し出します。それは如何に上等の硝子《ガラス》で張った鏡でも、横から見れば必ず硝子の厚みがわかると同時に濃淡二様の二重映像が見えるのと
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