ゾッとするまでに満足させるか……。

     毒婦、色魔、悪党
       ――悪魔式鼻の表現(四)

 敵は本能寺にあり、相手の生血を吸い取り得れば――相手を丸裸になし得れば――又はどこかに売りこかし得れば、あとは野となれ山となれ――泣こうが喚《わ》めこうが発狂しようが、どこを風が吹くという鼻の表現で取り付く島もなくふり捨ててしまうのであります。
 毒婦や色魔は世間を摺れ枯らした結果、すべてに対して捨て鉢であると同時に高を括《くく》っているのであります。すべてに対して絶対に冷やかな態度を執り得ると同時に、その相手に対して寸分の未練も残さないのであります。鵜の毛で突いた程でも未練があればそれが直ぐにこちらの弱味……鼻の表現の変化の妨げ……になる事をよく心得ているので、いつ何時でも「嫌なら嫌でいい」という態度を取り得るまでに腹を締めているのであります。
 ですからすべての執着や気がかりを離れて、どんな気もちにでもなる事が出来るのであります。名優と同じように、その境界や場面のうちで最も相手の弱点を捕え得べき感情や意志を腹の底から表現する事が出来るのであります。真そこから泣き、笑い、怒り
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