多少動いたり色が変ったりする鼻も珍らしくないようであります。これはタータの記録があまりに哲学的に論じてあるためか、又は今日の人類がそれだけに進化したためか、どちらかでなければなりませぬ。
 しかしいずれにしましても、鼻が独力を以て動的表現をなし得ない事は先ず事実と認めて差し支えありますまい。鼻がたった一人で如何に色を換え、形を換え、手を変え品をかえて見ても、結局それは何を意味しているのか判然しませぬ。眼だけが細く波打って笑いを見せ、口だけがへの字になって怒りを見せるのとは同日の論でないのであります。
 しかし同時に鼻が些《すこ》しでも鼻以外の表現能力の補助を受けると、直ちに驚くべき表現力を発揮し得る事は、事実が証明しているのであります。さながら竜の水を得たるが如く、又は虎の山に凭《もた》れるが如く無辺際に亘って活躍して、鼻以外の表現能力が発揮し得ない範囲にまでも遠く深く及ぶものであります。
 ここに於て鼻の表現能力は如何なる哲学、如何なる宗教、如何なる芸術も解決し得ない不可思議その者となって来るのであります。
 永久に解決出来ない神秘で、しかも眼前にある明白な事実となって来るのでありま
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