表現は理屈では認められぬ、ただ事実上にのみ存在し得るという事を深く深くうなずかせました。
 法廷のそこここに溜息の評が洩れました。月の神はさらに議論を続けました。
「但し、これだけの事実は認められます。ダメス王の鼻が王自身の表現界の王であった事は、恰《あたか》もダメス王が埃及《エジプト》国の王であったと同様でありました。王の顔面の表現機関は王の鼻の左右大臣であり、その他の全身各部の表現作用は、その召使であり奴隷でありました。しかしこれ等の事実は、そのままに動的表現が不可能である事を証明していたのであります。王の鼻はこれ等の表現の補助を受けなければ、何等の動的表現もなし得なかったのであります。そうしてこれ等の補助機関が細かに動き得れば得る程、王の鼻の表現は殖《ふ》えて行ったのであります。
 ダメス王の鼻は、王の意志、感情、性格、その他王自身に就て、王の知らない事共までも存じていると申します。しかし、知っているということは、表現し得るという事ではありませぬ。
 王の鼻は、その知っている事、感じている事をその臣下たる動的表現係の各大臣に申し付けて表現させました。そうして自分自身の表現であるか
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