に方法がありませぬ。自分の鼻の表現の起こる源に探りを入れて、その根本を明らめて方向をきめる。そうしてその方向に時々刻々に油断なく進むよりほかに致し方ありませぬ。
うっかり立ち止《とど》まったり、屁古垂《へこた》れたりしてスフィンクスに呪われないように――天狗かおかめかヒョットコなぞいうような馬鹿なお化けに取りつかれないように――人間一代の恥辱の姿にならぬように――
獣から人間へ――
物質界から精神界へ――
そうして人間から……?……へ
さて又精神界から……?……へ
自分自身がスフィンクスになって――
自分の鼻の表現を研究し完成して――
鼻の表現研究の必要がなくなっても――
これを超越してしまっても――
「アハハハハハハハハハ」
……まだ天狗様が笑っております。
――自覚――自覚――飽く迄も――
――いつ迄も――
そうして、生命《いのち》のある限り――
地球の冷尽《ひえつく》す限り――
鼻の表現を――新しく――新しく――
底本:「夢野久作全集11」ちくま文庫、筑摩書房
1992(平成4)年12月3日第1刷発行
※41字詰めの底本で、天地全角空けて
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