。自滅する外はないのだ。此奴等がいるので、吾々も生き甲斐があるというものである。
 それにしても此奴等がみんなおれ位にまでなり得たら、おれもどれ位気が楽になるか知れないがなあ。
 ――やれやれ――」
 と世界を見渡して、羽|団扇《うちわ》か何かで鼻の下を煽ぎながらニコニコと笑っております。
 こんな大々的の天狗様になると、もう無暗《むやみ》にそこいらにはおりません。鼻も当り前よりはすこし高くて大きい位で、顔もそんなに恐ろしくはありませぬ。その代り正体もなかなか見せませぬので、草になったり木になったり、土百姓に化けたり、旅僧の姿をしたりして、方々の小天狗共を凹《へこ》ませては、大天狗道に入らせようと努力しております。
 ……いつの間にか世界は、天狗様ばかりになってしまいました。
 中でも天狗の原産地たる吾国では、到る処の高山深谷に住んで、各《おのおの》雄名を轟かしております。先ず天狗道の開山として、天孫を導き奉った猿田彦の尊《みこと》の流れとしては、鞍馬山の大僧正が何といっても日本天狗道の管長格でありましょう。九州では彦山の豊前《ぶぜん》坊、四国では白峯の相模坊、大山《たいせん》の伯耆《
前へ 次へ
全153ページ中149ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング