いる限り、この種の鼻の表現に対する感得力は持っているものであります。仮令それが惚れたはれたの真只中《まっただなか》、浮いた浮いたの真最中でも、相手の女性はこの感得力だけは別にチャンと取っておいて、暗黙の裡に男性の心理状態を研究し続けているものであります。
殊にこの傾向は、意地で世間を振り切ったというような、一種緊張した境地を歩む女性、又は男に飽き果てたという極度の濁りから出た、一種の澄み切った気分を楽しむ婦人、或《あるい》は又全く何にも知らぬポッとした女性に最も甚だしいのであります。こんなのになると金にあかし、望みに明かしてもうんと云わない。「殺す」と威《おど》しても、勝手にしろと鼻であしらうようなのすら見受けられるのであります。
ここまで来ると鼻の表現の価値の神聖無上さは実に天地の富にも換え難い位で、女性は只男性の鼻の表現のために生きていると云っても差支えないのであります。
「何の二千石君と寝よ」という凄いのが出て来るのもこの理由からであります。
「身体《からだ》は売っても心は売らぬ」という篦棒《べらぼう》なのが出て来るのもこの意義からであります。
ここに到っては如何なる悪魔式
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