を喰わされたばかりじゃない。面倒臭いといって沖に放り出されて鯖の餌食にされたんだから、気の毒も可愛想も通り越している。君等には関係のない事かも知れんが、これから行って大いに弔問してやらなくちゃならん。……もっとも今更、線香を附けてやったって成仏《じょうぶつ》出来まいとは思うがね。ハッハッハッハッハッ……」
 といった調子で、今まで溜まっていた毒気を一度に吹っかけながら退場してくれた。……ハハハハ。イヤ。痛快だったよ。何の事はない役人連中、蚊《か》を突っついて藪《やぶ》を出した形になった。おまけにアトから聞いてみると、当日来なかった連中の中の十人ばかりが風邪を引いて、宿屋に寝ていたというのだから吾輩イヨイヨ溜飲を下げたもんだよ。
 とはいうものの……白状するが吾輩は、そのアトから直ぐに有志連中が調停に来るものと思って、実は手具脛《てぐすね》を引いて待っていたもんだ。……来やがったらドウセ破れカブレの刷毛序《はけつい》でだ。思い切り向う脛《ずね》を掻っ払ってくれようと思って、一週間ばかり心待ちに待っていたがトウトウ来ない。可怪《おか》しいと思って様子を探っていると、これも慌てて海に飛び込ん
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