誤解されては困ります。爆弾漁業の取締りに就いて今後共に一層の注意を払う覚悟でおりますが、しかし、それはそれとしてとりあえず今度の事件だけに就いての善後策を、今日、この席上で……」
 とか何とか云いながら上席らしい胡麻塩《ごましお》頭の一人が改まって頭を下げ初めた。それに連れて二三人頭を下げたようであったが、内心ヨッポド屁古垂《へこた》れたらしいね。しかし吾輩はモウ欺されなかった。
「……待って下さい。その交換条件ならこっちから御免を蒙りましょう。陛下の赤子《せきし》、五十万の生霊を救う爆弾漁業の取締りは、誰でも無条件で遣らなければならぬ神聖な事業ですからね。今後、絶対に君等のお世話を受けたくない考えでいるのです。……ですから君等の職権で、勝手な報告を作って出されたらいいでしょう。……吾輩は忙がしいからこれで失礼する」
「……まあまあ……そう急《せ》き込まずと……」
「いいや失敬する。安閑と君等の尻拭いを研究している隙《ひま》はない。……何よりも気の毒なのは死んだ二人の芸者だ。林友吉や、お互いの災難は一種の自業自得に過ぎないが、芸妓《げいしゃ》となるとそうは行かん。何も知らないのに巻添え
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