の講演を忌避して、船遊山《ふなゆさん》を思い立ったのは誰でしたっけね」
と空っトボケてやったもんだ。
すると誰だか知らない検事か判事みたような男が背後《うしろ》の方から、
「それでも友吉親子を推薦したのは貴下《あなた》ではなかったか」
と突込んで来たから、わざとその男の顔を見い見い冷笑してやった。
「……ハハハ……その事ならアンマリ突込まれん方が良くはないですか。実は昨晩、弁護士に調べさせてみますと、友吉の前科はズット以前に時効にかかっていたものだそうです。私は法律を知らないのですが……それでなくとも拘留中の現行犯人を引出して、犯罪の実演をさせるよりは無難だろうと思って、実は、あの男を推薦した次第でしたが……それでも貴方がたの法律眼から御覧になると、現行犯を使った方が合理的な意味になりますかな……」
と乙《おつ》に絡んで捻《ね》じ返してくれた。吾れながら感心するくらい頭がヒネクレて来たもんだからね……ところが流石《さすが》は商売柄だ。これ位の逆襲には凹《へこ》まなかった。
「そんな事を議論しているのじゃない。友吉おやじに、あんな乱暴を働らかした責任は当然ソッチに在る筈だ。その責
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