順風耳《じゅんぷうじ》を以てしてもナカナカ見当が付けにくい。……これは後から判明した話だが、彼奴《きゃつ》等は一時南鮮の孤島、欲知《ほっち》島の燈台守を買収してここを爆弾の溜りにしていた事がある。しかも燈台の上から高度の望遠鏡で、水雷艇や巡邏船を監視して、色々な信号を発していた……というのだから、如何にその仕事が統制的で、大仕掛であったかが想像されるだろう。
 然るに、ソンナ程度にまでドン漁業が深刻化しつつ擡頭して来ている事を、夢にも知らなかった吾輩はアタマから呑んでかかったものだ。……懲《こ》り性《しょう》もない鼠賊《チョコマン》ども……俺が居るのを知らないか。来るなら来い。タッタ一ヒネリだぞ……というので、腕に縒《より》を掛けて釜山一帯の当局連中を鞭撻にかかったものだが、その手初めとして取りあえず慶尚南道《けいしょうなんどう》の有志、役人、司法当局四十余名を釜山公会堂に召集して、爆弾漁業|勦滅《そうめつ》の大講演会を開く事になった。これに各地方の有力者二十余名、臨時傍聴者三百余名を加えた有力この上もない聴衆を向うに廻わして吾輩が、連続二日間の爆弾演説をこころみる……というのだから、
前へ 次へ
全113ページ中61ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング