銃砲火薬類取締の粛正、不正漁業徹底|殲滅《せんめつ》の指令が下る。しかも総督府から指導のために出張した検事正や、警視連の指《ゆびさ》す処が一々不思議なほど図星《ずぼし》に中《あた》る。各地の有力者が続々と検挙される。その留守宅の床下や地下室、所有漁場の海岸の砂ッ原、岩穴の奥、又は妾宅の天井裏や泉水の底なぞから、続々証拠物件が引上げられるという、実に疾風迅雷式の手配りだ。ここいらが山内式のスゴ味だったかも知れないがね。
 それあ嬉しかったとも……吹けば飛ぶような吾々の報告が物をいい過ぎる位、いったんだからね。
 しかしソンナ事はオクビにも出せない。むろん総督府の方でも御同様だったに違いないが、その代りに今後、爆薬漁業の取締に就《つ》いて、万事、漁業組合長、轟技師の指導を受くべし……といったような命令が、各道の官庁にまわったらしい。吾輩の講演を依頼する向きがソレ以来、激増して来たのには面喰った。一時は、お座敷がブツカリ合って遣り繰りが付かないほどの盛況を逞《たくましゅう》したもんだ。流石《さすが》のドン様ドン様連中も、最早《もはや》イケナイと覚悟したらしいんだね。実に現金な、浅墓《あさはか
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