ん》過ぎやせんか……それは……。
何を隠そう吾輩は現在、この事件に関する詳細な報告書をあの机の上に書きかけとるんだ。しかしこれほどの怪事件はチョイトほかに類例が無いし、問題が又ドエラク大きいもんだから、あの報告書が出来上っても、どこへ出したら宜《え》えかチョット見当が附かんで困っておったところだが……まさかソコを探知して受取りに来たんじゃあるまいな……君は……。
フウン。そうだろう。そこまでは知らなかった筈だ。
……フウン……しかし奇怪な投書が検事総長の処へ来ている……ヘエ。どんな投書だ……。
何だ。持って来ているのか。ドレドレ見せ給え……。
……ヤッ……これは血書じゃないか。しかも立派な美濃紙が十枚以上在る。大変な努力だぞ。これは……投函局が佐賀県の呼子《よぶこ》か……おかしいな。あすこにも吾輩の乾児《こぶん》が居るには居るが……大正九年八月十五日……憂国の一青年より……堅田検事総長閣下……フーム。無論、吾輩が書いたんじゃないよ。書体を見ればわかる。……ウーム……と……。
「私ハ貴官ノ正シイ御心ヲ信ジテコノ手紙ヲ書キマス。
水産翁、轟雷雄先生ガ免職ニナリマシタ裡面ニハ、国
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