き当りましたので……」という。「しかしタッタ今聞えたのは確かに爆薬《ダイナマイト》の音だ。ほかに船が居ないから貴様達に違いあるまい」と睨み付けると頭を掻《かい》てセセラ笑いながら「そんなら舟を陸に着けますから一つ調べておくんなさい」と来る。そこで云う通りにしてみると成る程、巻線香のカケラも見当らないから……ナアーンダイ……というので釈放する。
実に張合いのない話だが、しかし考えてみると無理もないだろう。水兵や警官は漁師じゃないんだからね。爆弾船《ドンぶね》の連中が持っている一本釣の道具が、本物かそれとも胡麻化《ごまか》し用の役に立たないものかといったような鑑別が一眼で出来よう筈がない。とりあえず糸《テグス》を引切《ひっき》ってみればタッタ今まで使ったものかどうかは吾々の眼に一目瞭然なんだが……爆弾船《ドンぶね》に無くてはならぬ巻線香だって、イザという時に海に投げ込めばアトカタもない。もっとも生命《いのち》から二番目のダイナマイトはなかなか手離さないが、その隠匿《かく》しどころが亦、実に、驚ろくべく巧妙なものなんだ。帆柱を立てる腕木を刳《く》り抜いたり、船の底から丈夫な糸で吊したり、沢
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