で、紅木大臣に蹴られて気絶していた筈なのに、今は王宮の内のどこかの室《へや》で、見事な寝台《ねだい》の上に寝かされて、傍には最前縛られていた四人の宮女が控えております。そうしてなおよくあたりを見まわしますと、自分の枕元には藍丸王がニコニコ笑いながら立っていまして、その背後《うしろ》には宮中の凡《すべ》ての役人が星のように居並んで、自分に向って敬礼をしている様子です。青眼先生はこの有様を見て何事かと驚きまして、慌てて寝台の上から辷《すべ》り降りて床の上にひれ伏しますと、王はその肩に手を置きまして、
「オオそんなに恐れ入るには及ばぬ。俺は今までのお前の罪を許したのだぞ」
 これを聞くと青眼先生は床の上にひれ伏して、恐れ入って申しました――
「ハイ。有り難い事で御座います。私はもうその御言葉を承りました以上は明日《あす》死んでも少しも心残りは御座いませぬ。私の心がおわかり遊ばしますれば、何で私が王様の御心《みこころ》に背《そむ》き奉りましょう。何卒《どうぞ》今日までの私の無礼の罪は、平に御赦し下されまするよう御願い致します」
 と誠意《まごころ》を籠《こ》めて申しました。藍丸王も如何にも嬉し
前へ 次へ
全222ページ中213ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング