この紅玉《ルビー》は、紅矢の妹共が忘れて行ったものでも何でもなく、全く悪魔が何かのために置いて行ったものに違いないと思われました。青眼先生は一寸の猶予《ゆうよ》も無く両親を呼んで紅矢の番を為《さ》せました。そうして自分は有り合う提灯に火を灯《とぼ》して、窓の外へ出まして、そこらをよく検《あらた》めて見ますと、石畳のあすこここに、一粒か二粒|宛《ずつ》紅玉《ルビー》が落ちています。青眼先生は占めたと思いまして、なおも提灯を地面にさし付けて、紅玉《ルビー》を探しながら、だんだんと跡を付けて行きますと、その跡は一間《ひとま》置いて隣りの室《へや》の窓の下に来て止まっています。そうしてその窓掛けの間からは薄い黄色い光りが洩れていました。
青眼先生はこの室《へや》が美紅の室《へや》という事をかねてから聞いておりました。けれども中を覗いた事は一度もありませんでした。ですから直ぐに提灯の火を吹き消して、その窓からそっと中を覗いて見ました。
窓の中の有様を一眼見るや否や青眼先生は思わず棒のように立《た》ち竦《すく》んでしまいました。窓の直ぐ傍の寝台《ねだい》の上には一人の美しい少女が寝ております。
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