婦に、今夜からは自分一人で夜伽《よとぎ》をして、悪魔の正体を見届けたいから、何卒《どうぞ》自分に任せて下さるようにと熱心に願いました。両親はこの頼もしい青眼先生の言葉を聞きますと、何で否《いな》やを申しましょう。直ぐに承知を致しまして、青眼先生を只一人この室《へや》に残して引き取りましたが、なお念のため家の周囲《まわり》には、力の強い勇気のある家来を大勢配って、油断なく見張らせるようにしました。
青眼先生は、室《へや》の中に一人も居なくなりますと、やおら立ち上ってそこらを見まわしましたが、この室は扉を締めておきさえすれば、あとは只窓一ツしか無く、他に出入りする処はありませんから、悪魔は屹度あの窓から這入って来たに違いないと思いました。青眼先生はこれを見定めて、なおもその窓の外をよく見ようと思って、不図窓の縁に手をかけますと、その隅の処に妙なものを見つけました。それは三粒の美しい紅玉《ルビー》でした。
青眼先生はこの世の中にありとあらゆるもので知らぬものは無く、殊に宝石の事は詳しく知っていましたから、この三粒の紅玉《ルビー》を一目見ると、直ぐに、これは世にも稀《まれ》な上等飛び切りの
前へ
次へ
全222ページ中153ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング