オドオドした魘《おび》えたような眼付きで、階段の上を見上げた。
「……マア……昨夜《ゆうべ》まで……ここに在ったのに……誰がまあ……」
「イーエ……お母チャマ……アタチ知っててよ。ゆうべね。アタチ達が帰ってからね。アノお人形のお姫《ひい》チャマが、菊の花を見たいって仰言《おっしゃ》ったのよ」
女性はすこしばかり血色を取り返した。
「……まあ……オホホ……」
「それでね……アノ御家来の熊さんが、持って行って上げたのよ……キット……」
「……ネ……ソウデチョ……お母チャマ……」
「……………」
底本:「夢野久作全集3」ちくま文庫、筑摩書房
1992(平成4)年8月24日第1刷発行
入力:柴田卓治
校正:kazuishi
2000年10月25日公開
2006年3月9日修正
青空文庫作成ファイル:
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