能とは何か
夢野久作

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)序《ついで》に

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)一番|捷径《しょうけい》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから1字下げ]
−−

 二三年前の事、或る若いエスペランチストが私の処へ遊びに来ました序《ついで》に、瑞西《スイス》とかのエスペラントの雑誌へ「能」の事を投稿したいから、話してくれないかと頼みました。ところが生憎《あいにく》、私は能というものを外国人に紹介する程の頭も学問も持合わせておりません。東京で行われる一流の能さえもあまり見た事がないくらいの貧弱な一ファンに過ぎないのですから、そんな大それた話は出来ないと云ってあやまりましたら、それなら概念だけでもいいから、質問に応じてくれ。それを参考にして論文を書いて見るから……とナカナカ頑強で熱心なのです。そこで私は大胆にも承知をしまして、その青年の質問に答えたのですが、その質問が又、意外に組織立っているのに些《すくな》からず驚かされた事でした。しかもその青年は私の答えを一々速記して日
次へ
全77ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング