能ぎらい/能好き/能という名前
夢野久作
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)火を点《つ》ければ
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(例)こなし[#「こなし」に傍点]
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能ぎらい
日本には「能ぎらい」と称する人が多い。否。多い処の騒ぎでなく、現在日本の大衆の百人中九十九人までは「能ぎらい」もしくは能に対して理解をもたない人々であるらしい。
ところがこの能ぎらいの人々について考えてみると能の性質がよくわかる。
目下日本で流行している音曲とか舞楽というものは随分沢山ある。上は宮中の雅楽から下は俗謡に到るまで数十百種に上るであろう。
ところでその中でも芸術的価値の薄いものほどわかり易くて面白いので、又、そんなものほど余計に大衆的のファンを持っているのは余儀ない次第である。つまりその中に「解り易い」とか「面白い」とか「うまい」とか「奇抜だ」とか「眼新しい」とか言う分子が余計に含まれているからで、演者や、観衆、もしくは聴衆が余り芸術的に高潮せずとも、ストーリーの興味や、リズムの甘さ、舞台面の迫真性、もしくは装飾美等に十分に酔
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