ども今一歩進んでその伊奈子が腕に縒《より》をかけた計画を、その終極点のギリギリのところで引っくり返したら伊奈子はどんな顔をするだろう。そうして開いた口が閉《ふさ》がらずにいる彼女に「天罰思い知れ」とか何とかいう、いい加減な文句をタタキ付けて、泥の中に蹴たおして、手も足もズタズタに切れ千切《ちぎ》れるような眼に会わしたら、どんなにかいい心持ちだろう。こう思うと、私の身うちの方々が、不可思議な快感でズキズキして来るように感じた。
私はそれから毎日毎日その計画ばかり考えていた。けれども残念な事に、そうした色んな計画が、天井に吹き上げる煙草の烟《けむり》と共に、数限りなく浮かんでは消え、消えては浮かみして行くうちに、私はいつも失望しないわけに行かなかった。私があらん限りの智慧を絞って作り上げた伊奈子タタキ潰しの計画は、表面上どんなに完全に見えていても、どこかに空想らしい弱点や欠点が潜んでいることを、後で考え直して行くうちにキット発見するのであった。言葉を換えて云えば伊奈子が叔父を陥れて行きつつある変態性慾の甘美世界から、コッソリと叔父を救い出す方法が発見されない限り……又は、伊奈子がこの妖婦
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