の身のまわりをスッカリ探り出してしまいました。
 ……何でも等々力若親分の若い奥さんというのは、近くの村の百姓の娘で、持って生れた縹緻美《きりょうよ》しと伝法肌《でんぽうはだ》から、矢鱈《やたら》に身を持崩していたのを、持て余した親御さんと世話人が、情《じょう》を明かして等々力の若親分に世話を頼んだものだそうですが、何ぼ等々力の親分のお声がかりでも、こればっかりは貰い手がないので、何となく顔が立たないみたいな事になって来たものだそうです。そこで……ヨシキタ……そんなら一番俺がコナシ付けてくれよう。俺の傍《そば》へ引付けておいたら、そう無暗《むやみ》に悪あがきも出来ないだろうというので、乾児《こぶん》たちの反対を押切って、立派な婚礼の式を挙げたものだそうですが、これが等々力親分の一生の身の過《あやま》りでした。というのは、その若い奥さんの伝法肌というのが、若い女のチョットした虚栄心が生んだ浅智恵から来たものだったのでしょう。若親分から惚れられているなと思うと、早速亭主を馬鹿にしちゃって、主人の留守中に、何かしら近所の噂にかかるような事をしていたのでしょう。ですから、そんな事を聞き出した生
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