生の秘密よ。今度、轟さんが殺された原因がスッカリわかる話よ」
「えッ。そ……そんな秘密が……まだあるんですか」
「ええ。トテモ大変な秘密なのよ。今月の十五日迄にこの秘密をアンタに脚色してもらって、来月の初め頃にかけて妾自身が主演してみたいと思っているんですから、そのつもりで聞いて頂戴よ」
「……かしこ……まりました」
「ですけどね。この話の内容は、芝居にすると相当物騒なんですから、警視庁へ出すのには筋の通る限り骨抜きにした上演脚本《あげほん》を書いて下さらなくちゃ駄目よ。興行差止《チリンチリン》なんかになったら、大損をするばかりじゃない。妾の計劃がメチャメチャになってしまうんですからね。是非ともパスするように書いて頂戴よ。もちろん日本の事にしちゃいけないの。西洋物の飜案《やきなおし》とか何とかいう事にして、鹿爪《しかつめ》らしい原作者の名前か何か付けて江馬兆策脚色とか何とかしとけばいいでしょ。その辺の呼吸は万事おまかせしますわ」
「……しょうち……しました」
「出来たら直ぐにウチの顧問弁護士の桜間さんに渡して頂戴……」
「支配人じゃいけないんですか」
「ええ。妾の云う通りにして頂戴……
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