核心はそこいらに在るかも知れませんからねえ」
「御高説もっともじゃが……まあ聞き給え。こうなんだよ。二人の日常生活を説明すると……これは二人の女中の陳述を綜合したものじゃが……先ず毎朝九時に娘の呉羽が先に起きて湯に這入る。女優としてはかなり早起の組だね。それから一時間ばかりかかって化粧をして、着物を着かえて出て来る」
「女中も何も手伝わないのですか」
「ウン。手伝わせるどころか、湯殿の入口をガッチリと鍵かけて、誰が来ても這入らせないそうだが、これは何か呉羽嬢が、天川一流ともいうべき秘密の化粧法を知っておって、それを他人に盗まれない用心じゃという話じゃが……」
「それは女中の話でしょう」
「そうじゃ。……一方に天川呉羽嬢に云わせると私は自分の肌を他人に見られるのが死ぬより嫌いです。無理にでも見ようとする人があったら、私は今でも自殺します……といううちにモウ、ヒステリーみたいに顔を歪《ゆが》めて眉をピリピリさせおったわい。ハハハ」
「すこし云う事が極端ですね。何か身体《からだ》に刺青《ほりもの》でもしているのじゃないでしょうか」
「そんな事かも知れんね……ところでそうやって浴室から出て来た
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