付いている犬猫とは違いますからね。もうもう今までのような間違った、不自然な可愛がられ方には飽き飽きしてしまいましたわ」
「……カカ……勝手にしろ。馬鹿。俺のお蔭で生きているのが解らんか」
「どうしても、いけないって仰言るの……」
「ナランと云うたらナラン……」
と云い捨てて廻転椅子に腰をかけ、事務机の上を片付け初める。
「オヤ。紙小刀《かみきり》が無い。鞘《さや》はここに在るんだが……お前知らんか……」
「存じませんわ。ソンナもの……」
「彼品《あれ》はトレード製の極上品なんだ。解剖刀《メス》よりも切れるんだから無くなると危険《あぶな》いんだ。鞘に納めとかなくちゃ……」
「よござんすわ。あたし、どうしても美鳥さんと結婚してみせるわ。キットこの家《うち》で美鳥さんに子守唄《ララバイ》を唄わせて見せるわ」
「……………………」
「何と仰言ったって美鳥さんを逐出《おいだ》させるような残酷な事は、断じて、断じてさせないわ」
「……勝手にしろッ。コノ出来損ないの……カカ片輪者《かたわもの》の……ババ馬鹿野郎ッ……」
「ネエ。いいでしょう……ねえ。ねえエ……あたしだってモウ……年頃なんですものオ
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