といううちに無茶先生はグルリと崖のふちをまわって、その家《うち》の門の口へ来ました。
見るとこの家《うち》の主人は五十ばかりのお爺さんですが、独身者《ひとりもの》と見えてお神さんも子供も居ず、たった一人で一生懸命鉄槌で鉄敷《かなしき》をたたいて、テンカンテンカンと蹄鉄を作っています。それを見ると無茶先生は大きな口を開いて、
「アハハハハハ。テンカンテンカン」
と笑いました。
鍛冶屋のお爺さんは不意に門口《かどぐち》から笑うものが居るので吃驚《びっくり》して顔をあげて見ますと、髪毛と髭を蓬々とさした真裸体《まっぱだか》の男が鞄を一つ下げて立っておりますので、大層腹を立てまして怒鳴り付けました。
「何だ、貴様は」
「おれは山男だ」
「山男が何だって鞄を持っているのだ」
「この中にはおれが山の草で作った薬が一パイに詰まっているのだ。どんな病気に利く薬でもあるのだ」
これをきくと鍛冶屋の爺さんは急にニコニコしまして、
「それあ有り難い。それじゃテンカンに利く薬もあるだろうな」
とききました。
無茶先生はトボケた顔をして、
「テンカンとはどんな病気だ。鉄槌で物をたたく病気か」
と
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