おか》しいのを我慢しながら、
「よしよし。きのうおれに香水を嗅がされて死にそうになったので、魔法使いだと思って捕えに来たのだな。しかも鼻ばかり用心して来るなんて馬鹿な奴だ。そんならも一度驚かしてやる」
と独言《ひとりごと》を云って、鞄の中から小さな瓶を取り出して、中に這入っていた粉薬を傍《そば》にあった火鉢の灰の中へあけて、スッカリ掻きまわしてしまいました。
それから今度は下へ降りて、宿屋の台所へ行って塩を沢山と、物置へ行って六尺棒を一本と、大きな鋸《のこぎり》を一梃と、縄の束を一把と取って、又二階へ帰りますと、何も知らずに寝ているヒョロ子と豚吉にシビレ薬を嗅がせ初めました。
宿屋を取り巻いた兵隊達は、鼠一匹逃がすまいと鉄砲を構えて待っております。
その中の大将は、出来るだけそっと表の戸をコジあけさせて、兵隊を四五人連れて宿屋の中に這入って、主人の寝ている枕元に来ますと、靴の先でコツコツと蹴って起しました。
お酒に酔っていい心持ちで寝ていた宿屋の主人は、何事かと思って眼をさましますと、自分の枕元に怖い顔をした大将と、鉄砲を持った兵隊が四五人立っていますので、夢ではないかと眼を
前へ
次へ
全118ページ中76ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング