うになる」
「成るほど。よくわかりました」
「サア。酒をもう一斗持って来い」
「ヘイ、只今持って来させます。それでは序《ついで》に私のおやじがカンシャク持ちで困りますから、それも治して下さいませ」
「よしよし、つれて来い」
こうして無茶先生は家《うち》中の者の病気をみんな治してやりました。
先ずおやじのカンシャク頭は、テッペンをクリ抜いて蓋をするようにして、憤《おこ》った時はその蓋を取ればなおるようにしてやりました。
お婆さんの禿頭《はげあたま》は、頭の上を掻きむしって、毛の種を蒔《ま》いてやりました。
娘の低い鼻は、鼻の穴に突っかい棒を入れて高くしてやりました。
女中の居ねむりは、着物の襟にトゲを縫いつけて、うつむくと痛いように仕かけてやりました。
下男の腰が痛いのは、腰の処に太い鉄の釘を打ち込んで丈夫にしてやりました。
こうしてみんなの病気を治してやりましたので、無茶先生のまわりに大きい、小さいお酒の樽がいくつも積まれました。
「もう病人は居ないか」
と無茶先生が云いますと、宿屋の主人は畳にあたまをすりつけて、
「ありがとう御座います。この上はこの家《うち》中のもの
前へ
次へ
全118ページ中70ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング