は泥棒の味方をするのですか。そんならこの腕をヘシ折ってやる」
 と云ううちに、ヒョロ子の腕に両手をかけました。
 ヒョロ子は驚きました。腕をへし折られては大変ですから、思わずその手を一振り振りますと、それに掴まっていたお婆さんは、まるで紙布のように宙に飛んで、河の中へポチャンと落ちてドンドン流れてゆきました。これを見た役人たちは、
「ヤッ、大変だ」
 というので、みんな婆さんを助けに走ってゆきます。ヒョロ子もビックリして助けに行こうとしますと、今度は豚吉が腕を捕まえて離しません。
「今の間に逃げろ逃げろ」
 と云ううちに、ヒョロ子を引っぱってドンドン逃げ出しました。
 豚吉とヒョロ子夫婦は、成るたけ人の泊らない淋しそうな宿屋を探し出して泊りますと、豚吉の着物を乾かしたり、お昼御飯をたべたりしましたが、それから宿屋の番頭さんを呼んで尋ねました。
「私たちは見かけの通り、身体《からだ》が長過ぎたり太過ぎたりするものですが、この町に私達の身体《からだ》を当り前に治してくれるお医者さんは無いでしょうか」
「それはよいお医者があります」
 とその番頭さんは云いました。
「この町の外れに一軒のきた
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