ぬような声を出し初めました。
これをきいた娘のお母さんは気が気でありません。
「あれ、もう止して下さい止して下さい。娘の足が抜けてしまいます。足が抜けて死んだら大変です」
と泣きながら止めましたので、村の人も引っぱるのを止めました。
「この上引っぱったら足が抜けるばかりだが、どうしたらいいだろう」
と村の人は相談を初めました。
「仕方がないから鍬《くわ》を持って来て、まわりから掘り出そう」
「それがいいそれがいい」
と云うので、又みんな村へ帰って、めいめいに鋤《すき》や鍬を持って来て掘り初めました。
「みんな、気をつけろ。娘さんの腹へ鍬や鋤を打ちこむな」
と大変な騒ぎになりました。
ヒョロ子はそんなことは知りません。最前の通り、二粒か三粒|宛《ずつ》御飯を口に入れて、よく念を入れて噛んでは、お汁《つゆ》をほんのすこし嘗めながら、やっと御飯を一杯とお汁《つゆ》を一杯たべてしまいまして、又一杯食べようとしますと、何だか裏の方で人が騒いでいるようです。
「サア、人間掘りだ人間掘りだ」
「まだ生きているんだぞ」
「怪我《けが》させぬように掘出せ掘出せ」
と云う声もきこえます。
「
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