くりになるのですか」
「それは山男の魔法使い……」
 と、鍛冶屋のお爺さんは又うっかりしゃべりかけましたが、急に首をちぢめて駈け出しました。
 鍛冶屋のお爺さんはあちらこちらと尋ねまわって、とうとうこの町で第一等の料理屋を見つけ出しまして、そっと台所からのぞいて見ますと、広いその台所の向うには火がドンドン燃えて、湯気がフウフウ立っております。そのこちらの大きな大きな俎《まないた》のまわりには、白い着物を着た料理人が大勢並んで野菜や肉を切っておりますが、葱の白いヒゲや玉葱の皮や、大根の首や薩摩芋の尻や頭なぞはドンドン切り棄てて、大きな樽の中に山のようになっております。
「ここだここだ。ここへ頼めば何でもあるに違いない」
 と鍛冶屋の爺さんはうなずいて中に這入りまして、二つ三つお辞儀をしました。
「ちょっとお願い申します。その樽の中のものを私に売って下さいませんか」
 と尋ねました。
 料理人はふり返って見ますと、みすぼらしい爺さんが大きな包みをかついで立っていますので、
「何だ、貴様は」
 と尋ねました。
「私は鍛冶屋で」
「かついでいるのは何だ」
「山男と、鉄で作った人間二人の着物で…
前へ 次へ
全118ページ中105ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング