する事になるのだ。日光と土に親しい文化、農民やプロの文化、都会以外の地方的文化、これ等が発達しなければ、日本の文化は日本の自滅を意味する事になる。東京の裡面にこのような出版物が横行するのは、日本の前途のためにどうあろうか」云々。
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上流社会
秘密フイルムの流行
震災後の東京の荒れ野原に、真っ先に興行物の色旗を翻えしたのは、浅草の活動写真十三館である。市内外各所の活動写真館は続いてイルミネーションを付けた。
この勢《いきおい》につれて東京市内外の到る処に小さな撮影所が出来た。
どんな仕事をするかというと、たとえば多摩川で情死があったと新聞に出る。直ぐに俳優を連れて現場に出張し、その新聞記事を脚本としてそのような場面を撮影し、活動小屋に売りつける。又は広告や宣伝用のフイルムの請負い、家庭の子供向き短尺物なぞを作る。その他いろんな事をしている。
彼等の中には或る種のフイルムを作って大金儲けをしているのがある。否、このような小撮影所ばかりでない。現在日本で片手の指で数えられている大会社の重役で、これをやっているのがある。
東京郊外にある自宅の
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