みせものし》なんだそうだ。成程と子供心に感心|仕《つかまつ》ったね。
「ヘエ。オジサンが見世物になるのけエ」
と訊いてやったら、義歯《いれば》を抓《つま》んでいた親爺が眼を細くしてニコニコした。ピストルの頭を分捕スコップで撫でまわしながら吾輩に盃を差した。
「……マアマア。そんげなトコロじゃ。どうじゃい小僧。ワシは軽業《かるわざ》の親分じゃが、ワシの相手になって軽業がやれるケエ」
「軽業でも、手品でも、カッポレでも都踊りでも何でもやるよ。しかしオジサン。力ずくでワテエに勝てるけえ」
「アハハハ。小癪《こしゃく》なヤマカン吐《つ》きおるな。木乃伊《ミイラ》の鉄五郎を知らんかえ」
「知らんがな。どこの人かいな」
「この俺の事じゃがな」
「ああ。オジサンの事かい」
「ソレ見い。知っとるじゃろ。なあ」
「知らんてや。他人のような気もせんケンド……ワテエは強いで。砂俵の一俵ぐらい口で啣《くわ》えて行くで……」
「ホオー。大きな事を云うな。その味噌ッ歯で二十貫もある品物が持てるものかえ」
「嘘やないで。その上に両手に一俵ずつ持ってんのやで……」
「プッ……小僧……酒に酔うてケツカルな」
「ワテエ
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