人とも青春なんかドッカへ行っちゃって貧乏|屑屋《くずや》の股引《ももひき》みたいに、無意味に並んでいるだけの状態だったからね。吾輩の考えなんか知らない未亡人は、今の内閣と政党みたいに心中しましょうよ、しましょうよって毎日毎日うるさく吾輩に甘たれていたもんだから無論、異存は無かったろうよ。そこでその火薬の話を打ち明ける前に、取りあえず骨休めかたがた、吾輩は娑婆《しゃば》の見納めのつもりで或夕方のこと、下町のバアへ一杯飲みに行っているとその留守中に、その実験室が大爆発してしまったのには驚いたね。否《いや》。実験室どころじゃないんだ。二町四方もあるかと思っていた日野家の屋敷内に在る鉄筋|混凝土《コンクリート》の家作と立木なんかが、地の下数千坪の土砂や、女中や、自動車や、未亡人と一緒に大空に吹上げられてしまった……らしいんだ。その時分には酒場でグデングデンになって狸の睾丸《きんたま》の夢か何か見ていたもんだから吾輩は全く知らなかったんだ。
むろん新聞に出ているよ。君等が生れない前の初号三段抜きだから、今で云ったら号外ものだろう。……亜黎子未亡人の前の夫、日野有三九という男は生前に非道《ひど》
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