その点からいうと華族なんぞより身分が上だ。唖川のお父さん、この花嫁を仇《あだ》やおろそかに思うてはなりませぬぞ」
 小伯爵が横合いから吾輩の手を握った。
「イヤ、鬚野先生……どうもありがとう。実はあの上海亭の二階で貴方のお話を聞いているうちによっぽど飛出してお礼を申上げようかと思ったんですが、万一貴方が、親爺の廻し者だったら大変と思って……プッ……」
 小伯爵は慌てて口に手を当てた。眼を丸くして老伯爵をかえりみた。老伯爵が不承不承に疎《まば》らな歯を露《あら》わして笑った。
「アハアハアハ。何でも宜《え》え。これから仲よくしてくれい」
 吾輩は黙ってシャッポを脱いで、袖のないマントの肩で風を切って、豪華な応接間を出て行きかけた。
 安心したので急に酔いが上がって来たものらしい。フラフラしながら扉《ドア》にぶつかった。
「おお、鬚野君。まあええじゃろ、ゆっくりして下さい。一パイ差上げるから」
「先生。御ゆっくりなさいませよ」
「イヤ、モウ運命の神様は辞職だ。アトは女将によろしく頼むわい」
「そう云わずとこの家《うち》に泊って行ってはドウかな」
「この家は暑いです。イヤ、若夫婦万歳」
 吾
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