から略する事にしている。
いずれにしても創作人物の名前が、神経衰弱のタネになるのは私一人ではないらしい。
しかもウッカリすると、作者の個性だか趣味だかが一定しているために、全然別の創作の中の同じような性格の人物の名前が、似通ったようなのがチョイチョイ出て来る事もあるのだから油断がならない。
しかし又一方にそうした傾向を利用した、作者の趣味とピッタリした人物を中心にして色々な物語を書いて行くのはたしかに賢明な方法である。
ホームス、ルパン、ミッキーマウス、ノラクロ何とかいったような名前は、要するに創作人物の名前の持つ魅力を百パーセントに利用したもので、そんなダシの利く名前を発見した人の喜びは考えるさえ嬉しくてならない。
まだまだ創作人物の名前については重要な事を沢山に書残しているようであるが、さてこうして書き初めてみるとナカナカ重大な問題らしく、あとから――書く事がイクラでも出て来るのに驚いている。
まことに辻褄の合わない事ばかり並べ立てたようであるが、今までの小説評に、名前の附け方の評なぞ出ないようである。しかも考えようによっては、創作人物の名前の附け方というものは、たしかに一つの立派な芸術のように思われるから、ちょっとその口開きまでにコンナ愚文を発表してみた。
底本:「夢野久作全集11」ちくま文庫、筑摩書房
1992(平成4)年12月3日第1刷発行
入力:柴田卓治
校正:小林徹
2001年10月29日公開
2006年3月1日修正
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