人形と狼
夢野久作
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)奴《め》
−−
お腹の空いた狼が野道を歩いて来ますと、遠くに一人の赤ん坊が寝ているのを見つけました。狼は大喜びで走って来てみると、それは誰かが落した大きな人形でした。
「ええ、この役立たず奴《め》が」
と狼はあと足で蹴散らかしました。
「乃公《おれ》のたべ物にならない位ならば何だって人間の形をして生まれて来た」
人形はニコニコして答えました。
「お気の毒様ですね。あなたのように何でも可愛がる事を知らないものには私は役立たずに見えるでしょう。しかし人間の中には私を生命よりも大切な友達にして下さる方がいくらでもありますよ。私は狼のお役に立つよりも人間のお役に立った方がうれしいと思います」
底本:「夢野久作全集7」三一書房
1970(昭和45)年1月31日第1版第1刷発行
1992(平成4)年2月29日第1版第12刷発行
初出:「九州日報」
1923(大正12)年11月9日
※底本の解題によれば、初出時の署名は「香倶土三鳥」です。
入力:川山隆
校正:土屋隆
2007年7月21
次へ
全2ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング