ると、薄桃色の肉の間に何だか白い三角|型《がた》のものが挟まっているようです。ハテナと思い思いホジクリ出してみると、そいつがどうです。三|分角《ぶかく》ぐらいの薄桃色の紙片《かみきれ》の端なんで……永いこと赤い肉の間に挟まってフヤケちゃっているんですから色合いなんかアテになりませんし、紙の質だって支那出来のレターペーパだか何だか、わかったもんじゃ御座んせんが、それでもその紙が、その黒い髪の毛と一つ所《とこ》に這入っていたことだけは間違いねえんで……。
 それでもマサカ……とは思いましたがドウモ変な心持ちになりましたよ。あっし[#「あっし」に傍点]に惚れていたフイ嬢《ちゃん》が、あっし[#「あっし」に傍点]の身代りにソーセージになって、ここまで跟《つ》いて来たんじゃねえか……ナンテ考《かんげ》えておりますと、最早《もはや》、ビールの肴《さかな》どころじゃ御座んせん。こっちの頭がソーセージみたいにゴチャゴチャになっちまいました。世界の丸っこい道理がズンズンとわかって来るように思いましてね……まったく……ヘエ……。
 ……ヘエ。どうも奥様……いろいろと御馳走様で……これで御免を蒙りやす。



底本:「夢野久作全集6」ちくま文庫、筑摩書房
   1992(平成4)年3月24日第1刷発行
※底本の「腸詰《ソーセージ》にに」を、「腸詰《ソーセージ》に」に改めました。
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2004年1月5日作成
青空文庫作成ファイル:
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