てから十日目ぐらいのお天気のいい朝でしたがね。あんまり航海《ナベゲタ》が退屈なもんですから、眼が醒めても起き上る気がしません。そのまんま特別三等《とくさん》の寝床の中で足をツン伸ばしてアーッと一つ大きな欠伸《あくび》をしたもんですが、そのトタンに桑港《シスコ》で知り合いの領事館の人からお土産に貰った小さな紙包みのことを思い出しました。ハテ何だったろうと思いながら、寝床の下のバスケットの中からその紙包を取り出して開けてみると、どうでげす。それが平べったいソーセージの缶なんで……。
 コイツは占めたと思って飛び起きると、食堂から五十二|仙《セント》の日本ビールを一本買って来て、ベットの上にアグラを掻きながら、缶の蓋を開けて、美味《うま》そうな腸詰《ちょうづめ》の横ッ腹をジャクナイフで薄く切り初めたもんですが、その中《うち》に何やらナイフの刃《は》に搦《から》まるものがあります。……ハテ……おかしいなと思いながら、そのナイフの刃を暗い窓あかりに透かしてみるとソイツが黒い女の髪の毛なんで……あっし[#「あっし」に傍点]はドキンとしましたよ。それでもマサカと思いながら今のソーセージの切口をよく見
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