の毛を※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]《むし》ったようにブツブツだらけでゲス。傍へ寄ると動物園臭くって遣り切れませんがね。男でも女でも物を呉れるたんびに「タヌキ」と云ってやると喜んでいるんですからヤッパリ獣《けだもの》なんでげしょう。
ところが、その毛唐のタヌキ野郎に非道《ひど》い目に合わされたお話なんで……獣《けだもの》だけに悪智恵にかけちゃ日本人は敵《かな》いませんや。
あっし[#「あっし」に傍点]等が人寄せをやっている台湾館の中には六人の台湾娘が居て、お茶の給仕をしておりました。そいつ等の名前《なめえ》は三十年も前《めえ》の事ですから忘れちゃいましたが、何でもフン、パア、チョキ、ピン、キリ、ゲタってな八百屋の符牒みたいな苗字の女の子が、揃って台湾|選《よ》り抜きの別嬪ばかりなんで、年はみんな十七か八ぐれえの水の出花《でばな》ってえ奴でしたが、最初っからの固いお布告《ふれ》で、そんな女たちに指一本でも指したら最後の助《すけ》、お給金が貰えねえばかりでなく、亜米利加でタタキ放しにするという蛮爵《ばんしゃく》様からの御達しなんで、おまけに藤村さんは藤村さんで、一足でも
前へ
次へ
全52ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング