告《おふれ》を出したものですよ。まったく、大本教《おおもときょう》のお筆先《ふでさき》に引っかかったみてえで……それから亜米利加へ着くまで二週間ばかりの間、六の親父とあっし[#「あっし」に傍点]と二人で上甲板の病室に入れられてウンウン云っておりました。
アトから聞いてみると揃いも揃ったステテコが二人つながって引っくり返《けえ》った。場違いのステテコだ……てんで船中の大評判になったんだそうで……おまけに二人とも……大変だ大変だ……とか何とか変な譫語《うわごと》を並べたもんですから、念のために血を取って調べてみると恐ろしいもんでゲス。浮気の痕跡《あと》がタップリと血の中に残っている。この白痴《こけ》野郎ッ……てな毒の名前《なめえ》だったと思いますがね。ヘエ。そのゴノゴッケンの陽性なんで、テッキリ脳梅毒……何をするかわからねえということになって閉《し》め込みを喰ったもんです。その又、船のお医者って奴がチャチな塩《しょ》っぱい野郎だったのでしょう。その中《うち》にホントの病気の名前《なめえ》がわかったんだそうですが……。
ヘエ。その病気の名前でゲスか。エエト……そうそう六の親父《おやじ》の
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